登山用サングラスの選び方。レンズの色と可視光線透過率で比べる基準

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注意:自然環境・気象・野生動物の状況は地域差と個体差が大きく、本記事の内容はあらゆる状況での安全を保証するものではありません。入山前に必ず該当自治体・管理団体の最新情報を確認してください。

登山用品店やECサイトでサングラスを探すと、レンズの色と濃さ、「調光」「偏光」という言葉だけが並び、自分の行き先にどれが合うのか分かりにくいです。日帰りで樹林帯を歩くのか、残雪期の稜線を歩くのかで、向くレンズは変わります。色が濃いほど高性能だと思って一番暗いレンズを選ぶと、薄暗い谷筋や樹林帯で逆に見えにくくなることもあります。

この記事でわかること

  • 可視光線透過率(VLT)の意味と、登山で使いやすい範囲
  • レンズのカテゴリー0〜4の違いと、それぞれが想定する場面
  • 調光レンズの仕組みと、気温が低いときに起きること
  • 偏光レンズが向く場面と、向かない場面
  • 用途別に見るレンズの組み合わせ

選ぶ基準を先に書きます

  • 日帰りで樹林帯が中心なら、可視光線透過率20〜40%の固定レンズ(スモーク系かブラウン系)
  • 稜線や残雪期など、1日のうちで明暗の差が大きいなら調光レンズ。気温が低いと色が戻りにくい点だけ覚えておきます
  • 水辺の渡渉や雪渓の反射が強い場面なら偏光レンズ。液晶の画面や雪面の凹凸が見えにくくなることがあります
  • 高所登山や氷河など特に明るい環境は、カテゴリー4の専門モデル。運転には使えません

サングラスをかけてバックパッキングをする登山者ふたり

レンズの色の濃さは「可視光線透過率」で比べる

可視光線透過率(VLT)とは、裸眼のときの光の量を100%としたとき、サングラスのレンズが通す光の量のことです。数値が小さいほどレンズは暗くなります(山本光学 SWANS)。

レンズはこのVLTによって0〜4の5段階のカテゴリーに区分されます。数字が大きいほどVLTは低く、レンズは暗くなります(Julbo)。

  • カテゴリー0・1:低照度(夜間、早朝、曇天)向け
  • カテゴリー2:中程度の日差しや変化する環境向け
  • カテゴリー3:晴天時の日常的なアウトドア活動に向く、オールラウンドな選択
  • カテゴリー4:高所登山・氷河・雪原のような、特に明るく強いグレアがある環境向け

夏山登山では、VLTが20〜40%程度あれば、薄暗い谷筋や樹林帯でも着用したまま視界の明るさを確保できるとされています(SWANS)。レンズカラーはスモーク系とブラウン系が基本で、スモーク系は視界に色を付けないため裸眼と同じ視界色で景色を楽しめ、ブラウン系は肌なじみが良く柔らかい印象になります(SWANS)。つまり、登山で日常的に使うレンズは、カテゴリー4のような特別に暗いものである必要はないということになります。

レンズの色が濃くても、紫外線カットは別の話

色の濃さと紫外線カットは別の性能です。SWANSの製品は一部の度付きレンズを除くすべてのレンズカラーでUV400に対応し、波長400nmまでの光線を99.9%以上カットします。紫外線透過率は全レンズで0.1%以下、つまり紫外線を99.9%以上カットしています(SWANS)。OGK KABUTOの調光モデル「FA2」も、レンズカラーにかかわらず紫外線透過率は0.1%以下です(OGK KABUTO)。

薄い色のレンズでも紫外線はしっかりカットできます。色の濃さだけで「紫外線対策になっている」と判断する必要はありません。

調光レンズの仕組みと向く場面

調光レンズは、紫外線量や明るさに応じてレンズの色の濃さが自動で変わるレンズです。OGK KABUTOのNXT調光レンズは、紫外線量に応じてVLTが80%から10%の間で自動的に変化します(OGK KABUTO)。SWANSの「LUNA」もクリアからスモークまで、VLTが84%⇔10%の間で変動するモデルとして紹介されています(SWANS)。

樹林帯の薄暗さと、稜線やガレ場の強い日差しを1日のうちに行き来する計画なら、調光レンズはレンズ交換の手間がありません。

ただし、注意しておきたい点があります。調光(フォトクロミック)レンズの発色の濃さは紫外線の強さと温度によって決まり、一般的に温度が低いほど濃くなり、温度が高いほど薄くなります(ニコン・エシロール)。Julboの調光レンズ「REACTIV」は、平均で20秒未満で色が濃くなり、元の薄さに戻るまでは60〜120秒ほどかかります。この時間は気温・紫外線の強さ・レンズカテゴリーによって変わり、寒い環境では色が濃くなるものの、薄くなるまでの時間はさらに遅くなるとされています(Julbo)。つまり、気温の低い稜線で日向から樹林帯に入っても、レンズがすぐには薄くならず、薄暗く感じる場面があるということです。1本で済ませたい人には便利な一方、この戻りの遅さは頭に入れておきます。

調光は便利な反面、戻りの速さまでは選べません。寒い時期の稜線歩きが多い人は、この点を踏まえて選びます。

偏光レンズの仕組みと向く場面・向かない場面

偏光レンズは、薄い膜状のフィルターで有害な反射光と紫外線を取り除く仕組みです(タレックス)。雪面や水面からの強い反射光をカットしたいときに向いています。Julboの調光・偏光を兼ねたレンズも「反射面でのギラつきを除去する」としており、雪渓のような反射が強い場所での利用を想定しています(Julbo)。

山の草地で、サングラスをかけた登山者たち

一方で、向かない場面もあります。Smith Opticsは、スキーやスノーボードでは偏光レンズを推奨していません。理由は、ゲレンデ上の氷の反射が見えにくくなり、危険な場所を見つけにくくなるためです。サイクリングでも、路面の滑りやすい箇所やデジタル画面を見えにくくすることがあると注意しています(Smith Optics)。登山でも同じで、雪渓や岩場の凹凸を見分けたい場面では、偏光レンズがその凹凸を均して見せてしまうことがあります。

もう一つの注意点は、液晶画面です。偏光レンズをかけると、カーナビやヘッドアップディスプレイ、液晶の画面が見えにくくなることがあります(EYEVOL)。登山用GPSやスマートフォンの画面を頻繁に確認する人は、この現象が起きることを知っておきます。偏光度をあえて75%程度に抑え、液晶画面への干渉を抑えたレンズも存在します(EYEVOL)。

なお、「偏光サングラス」と表示できるのは偏光度90%以上のものに限られます(消費者庁)。SWANSの「Df.pathway PW-0053」はVLT40%・偏光度90%以上の偏光スモークレンズで、紫外線透過率は0.1%以下です(SWANS)。

水辺の渡渉や強い反射がある登山道で使うぶんには向きますが、雪面の凹凸を見分けたい場面や、スマートフォンの画面をよく見る人には、別の選択も検討しておきます。

高所・氷河用のカテゴリー4は、普段の登山とは別の領域

ヘルメットとグレイシャーグラスをかけ、雪の斜面を歩く登山者

高所の登山向けには、VLTが3〜8%というかなり暗いレンズが推奨されています。登山用サングラスに必要な2つの主要な機能は、UVB線を止めることと、顔にフィットして側面からの光を防ぐことだとされています(Julbo)。カテゴリー4のレンズは運転には適さないとも明記されています(Julbo)。

20〜40%が夏山の日常的な範囲であることを踏まえると、3〜8%はそれよりかなり暗く、樹林帯中心の日帰り登山程度ではレンズが暗すぎて視界が不足する場面が多くなります。氷河や雪原のような、雪面全体が強く光を反射する特別な環境のための装備として、普段の登山用とは分けて考えておきます。

カテゴリー4のグレイシャーグラスは、高所登山や氷河を歩く計画がある人向けの専門モデルです。通常の日帰り・縦走では、ここまで暗いレンズを選ぶ必要はありません。

用途別に見る、レンズの組み合わせ

  • 日帰り・樹林帯中心の低山:VLT20〜40%の固定レンズ(スモーク系かブラウン系)
  • 稜線・残雪期で明暗の差が大きい:調光レンズ。気温が低いと色が戻りにくい点を踏まえておく
  • 水辺の渡渉や雪渓の反射が強い場面:偏光レンズ。液晶画面をよく見る人、雪面の凹凸を見分けたい人は別の選択も検討する
  • 高所登山・氷河:カテゴリー4の専門モデル。普段の登山用とは別物として持つ

なお、風や雪が強い場面でレンズだけでは足りないときはゴーグルという選択もあります。使い分けは雪山入門の装備一式で扱っています。

まとめ

  • 色の濃さは可視光線透過率(VLT)で比べる。数値が小さいほどレンズは暗い
  • 夏山の日常的な範囲はVLT20〜40%。カテゴリー4のVLT3〜8%は高所・氷河用の特別な領域
  • 色が濃くても紫外線カットの強さは別の性能。薄い色でも紫外線はしっかりカットできる
  • 調光レンズは1本で済むが、気温が低いと色が戻るまでの時間が長くなる
  • 偏光レンズは反射光をカットする一方、雪面の凹凸や液晶画面が見えにくくなることがある

レンズの数値をどう読むかという点では、登山用ヘッドランプの選び方でも同じ考え方を扱っています。ヘッドランプの記事では、ルーメンと点灯時間の関係を例にしています。

出典

画像クレジット

  • アイキャッチ:Hiker putting on sunglasses on Mastodon Peak Trail(NPS / Emily Hassell、Joshua Tree National Park、Public Domain)/Wikimedia Commons
  • 本文1枚目:Backpacking Self Portrait(climbingcrystal、CC BY 2.0)/Flickr
  • 本文2枚目:River Crossing Practice(Denali National Park and Preserve、CC BY 2.0)/Flickr
  • 本文3枚目:Mountain hiker in a helmet and glacier glasses(Siarhei Besarab、CC BY-SA 4.0)/Wikimedia Commons
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