ツキノワグマはいつ動くのか。環境省の資料で読む季節ごとの行動と食べ物

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注意:自然環境・気象・野生動物の状況は地域差と個体差が大きく、本記事の内容はあらゆる状況での安全を保証するものではありません。入山前に必ず該当自治体・管理団体の最新情報を確認してください。

「クマは秋に出る」とよく言われます。ただ、なぜ秋なのか、春はどうなのかまで説明されることは多くありません。

環境省の資料を読むと、春と秋では出没が増える理由がまるで違うことが分かります。同じ「出た」でも、中身が別物です。

遭遇したときの行動には踏み込まず、いつどこで動いているかに絞ります。

この記事でわかること

  • 冬眠の時期と、出産のタイミング
  • 春と秋で出没が増える理由が違うこと
  • 季節ごとに何を食べているか
  • 堅果類の不作が出没を増やす仕組み
  • この記事で扱えない範囲

相手を知る

本州と四国にいるのはツキノワグマ、北海道はヒグマです。九州には現在いないとされています。

体重は春から夏にかけて減り、秋は冬眠に備えて脂肪を蓄えるので急に増えます。同じ個体でも季節でまるで違う体格になる、ということです。秋に見るクマは春に見るクマより明らかに大きくなっています。

嗅覚が鋭く、聴覚も発達しているとされています。そして、こういう身体能力があります。ツキノワグマは木に登れます。 上腕の筋肉が発達していて、関節の可動域が広く、爪も鋭い。木に登れば安全、という考えは成り立ちません。

採食するツキノワグマ

行動は基本的に単独です。子育ての期間はツキノワグマで1年半、それ以外は単独で動きます。つまり、複数で見かけたら親子である可能性が高いということになります。

冬眠の幅は2か月ある

冬眠に入るのが11月下旬から12月頃、明けるのが3月から5月です。ここに2か月の幅があります。3月に出てくる個体もいれば、5月まで寝ている個体もいる。地域と年によって変わるので、「まだ3月だから大丈夫」は根拠になりません。

出産は冬眠中の1月下旬から2月上旬です。出産したメスは冬眠明けが遅い傾向にあるとされています。春の遅い時期に、子連れの個体が出てくることになります。

春から夏は、若いオスが迷っている

秋とは別に、春から夏にも出没が増えます。理由がまったく違います。

繁殖期は6〜7月で、この時期に子別れが起きます。親から離れた若いオスは、生まれた場所から離れた土地へ移動します。これを分散と呼び、環境省は若いオスの分散が、春から夏に人の生活圏への出没が増える要因だとしています。

言い換えると、経験の浅い個体が、知らない土地を行き先も決めずに動いている状態です。人を避ける学習が済んでいないぶん、里に出てきやすくなります。

霧のかかった林縁の草地

秋は、食べる時間そのものが延びる

10〜11月は冬眠に備えて食欲が増す時期です。変わるのは量だけではありません。一日の活動時間が長くなり、夜間の活動量も増えます。

登山の時間帯に直結します。これまで会わなかった早朝や夕方に、動いている個体がいるということです。

そして、出没の年ごとの差を生んでいるのがここです。

堅果類が不作時には行動圏が拡大し、人の生活圏への出没が増加する要因となる。

「今年はクマが多い」と言われる年は、頭数が増えたのではありません。 同じ数のクマが、より広く動いている。山に食べ物がないので、里のクリやカキを目当てに下りてくる、という順序です。

季節ごとの食べ物

植物質が中心の雑食で、餌の分布と量に応じて柔軟に変えます。地域や年で食性はさまざまだと資料自身が書いています。動物を積極的に襲うことは稀ですが、捕獲されたシカの死体などを利用することはあります。

  • … 山菜や草本類
  • … 草本類、アリなどの昆虫、イチゴ類やサクラ類の果実
  • … ブナ・ミズナラなどの堅果類、ヤマブドウ・サルナシなどの果実

春に注意が要ります。環境省は、山菜や草本類を食べる時期には山菜採りでの遭遇が増加すると書いています。同じものを目当てに、同じ場所を探しているからです。「クマがいる場所に人が入る」のではなく、人とクマが同じ目的で同じ斜面にいるという状況になります。

林床に落ちた堅果とどんぐり

寿命は、捕獲個体の記録からツキノワグマで15〜20歳とされています。

計画に落とせること

1. 時期で理由が違うので、警戒の中身も変わります。

春から夏は若いオスの分散、秋は餌を求めた行動圏の拡大です。

2. 山菜採りは、クマと同じ場所を探す行為です。

春に山菜を目当てにするなら、その前提で動いてください。

3. 堅果類の作柄が判断材料になります。

ブナやミズナラの結実状況を公表している自治体があります。不作の年は行動圏が広がると資料が明示しているので、入山前に見る価値があります。

まとめ

  • 本州と四国はツキノワグマ、北海道はヒグマ
  • 冬眠は11月下旬〜12月に入り、3〜5月まで。幅がある
  • 出産は冬眠中の1月下旬〜2月上旬
  • 春から夏の出没は若いオスの分散が要因
  • 秋(10〜11月)は飽食期。活動時間が延び、夜間の活動も増える
  • 堅果類が不作の年は行動圏が拡大する。頭数ではなく行動範囲の問題
  • 春は山菜採りと食べ物が重なる
  • ツキノワグマは木に登れる

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出典

画像クレジット

Wikimedia Commons と Flickr から。

  • 採食するツキノワグマ: Ursus thibetanus by Alpsdake(CC BY-SA 3.0)
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