秋の登山の手袋。素材と厚さで選ぶ基準

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注意:自然環境・気象・野生動物の状況は地域差と個体差が大きく、本記事の内容はあらゆる状況での安全を保証するものではありません。入山前に必ず該当自治体・管理団体の最新情報を確認してください。

地図を広げようとして手袋を外すと、指先がすぐにかじかむ。スマホの操作もしづらい。10月下旬から12月にかけての登山は、そういう季節です。

ただ、雪が積もる時季向けの厚い防寒グローブはまだ早い気がする。かさばるし、細かい操作がしづらくなります。この時季に要るのは、もう少し薄い手袋です。どれを選べばいいのか、素材と厚さの組み合わせで整理しました。

この記事でわかること

  • 手袋に求められる3つの性能
  • 防水モデルと防滴モデルの違い
  • 着脱式と一体型、2つの構造の違い
  • 晩秋の日帰り〜小屋泊でどこまでの厚さが要るか
  • 本格的な冬季用グローブとの違い

晩秋はまず薄手から

晩秋の日帰り〜小屋泊なら、まず薄手のウールか化繊のインナーグローブ1枚を基準に考えます。風が出る稜線を歩くなら防風タイプ、雨や霜で濡れる想定なら防水タイプを候補に加える、という組み合わせです。

本格的な厚手の防寒・防水一体型は、雪が積もる時季のアイゼン歩行やロープワーク向けに作られています。晩秋の一般的な行程には、重さも厚みも過剰になりやすいところです。

紅葉した稜線を望む晩秋の山並み

稜線に出ると、同じ日でも樹林帯より風が強く当たります。手袋の候補を風の有無で分けて考えるのは、この差のためです。

手袋に求められる3つの性能

モンベルは、冬山グローブの選び方で、グローブに求める性能を「保温性」「防水透湿性」「作業性」の3つに整理しています。

保温性は「手のかじかみや凍傷などの、冷えによるリスクを回避する」ためのもの。防水透湿性は「溶けた雪の浸入をシャットアウトし、濡れによる冷えを防ぎ、発汗によるムレを軽減する」ためのもの。作業性は「グローブを着用したままでもポールやピッケル、ロープなどの操作が容易」であることを指します。

晩秋はこのうち、保温性と作業性の比重が大きくなります。濡れた雪をシャットアウトする厚い防水性能までは、多くの行程でまだ要りません。

薄手のグローブを着けたまま無線機を操作する登山者

薄手のグローブは、着けたまま細かい操作ができるかどうかが選ぶ基準になります。厚みが増すほど、この作業性は下がります。

防水モデルと防滴モデルは縫い目の処理が違う

同じページは、防水モデルと防滴モデルの違いも説明しています。どちらも防水透湿性のある素材を使いますが、違いは縫い目に防水処理(シームテープ)が施されているかどうかです。

防水モデルは縫い目もテープで処理した完全防水設計です。防滴モデルは縫い目からの浸水までは防げません。「防水」と書かれていても、縫い目の処理まで見ないと実際の防水性能は分かりません。

構造で選ぶ

構造には大きく2つあります。「アウターグローブ」に取り外し可能な「インナーグローブ」を組み合わせる着脱式と、保温材入りで単体で暖かい一体型です。

着脱式は、気温や作業に合わせてインナーだけ、アウターだけ、両方重ねてと使い分けられるのが利点です。一体型は単体での装着感がまとまりやすい一方、組み合わせの自由度は下がります。

晩秋は、着脱式のインナー側だけ、または薄手の一体型で足りる場面が多くなります。

素材で選ぶ

ウールのインナー(薄手)

ウールには、汗の水蒸気を吸うことで「吸着熱」を発生させ、低温下でも凍らないという特徴があります。晩秋から初冬の、気温がそこまで下がらない行程に向いた素材です。

たとえばハンズオングリップの「Hobo」は、本体が毛100%のメリノウール手袋です。縫い目を最小限にした形で、単体の薄手手袋としても、インナーグローブとしても使えます。重量は1双46g(販売店の実測値)です。

スマートウールの「ライナーグローブ」は、ウール48%・ポリエステル48%の混紡で、重量43g(販売店の記載)。化繊を混ぜて耐久性を上げたタイプで、親指と人差し指がタッチスクリーンに対応しています。単体でも、厚手の手袋やミトンの下に着けるインナーとしても使えます。

フリースのインナー(薄手)

ウールではなく化繊フリースを選ぶ手もあります。ザ・ノース・フェイスの「イーチップグローブ」は、甲側にリサイクルフリース、手のひらにストレッチフリースを使った手袋で、スマートフォンのタッチパネル操作に対応しています。メーカーは、冬のインナーから春・秋の防寒用まで使えるとしています。

防風タイプ

スワニーの「トレイルフレクサーグローブ(TR-706)」は、手の甲に「ゴアテックス インフィニアム™ ウィンドストッパー®」、手のひらと指にヤギ革を使った防風グローブです。風を止めながら、汗の水蒸気は外に逃がす素材です。防水ではありませんが、革の撥水性で小雨ははじくとされています。

想定は春〜秋の3シーズンと、冬の樹林帯での雪山ハイク。トレッキングポールの操作や、クサリ場での使用を考えた作りです。インナーより厚手で価格も上がるので、風の強い稜線や岩場の多い行程向けの選択肢です。

防風性の高い生地で風を止めるという点では、上着のウインドシェルと同じ考え方です。風を止めるだけなら、厚い防水素材までは要りません(上着側の違いはウインドシェルの記事にまとめています)。

防水透湿タイプ

雨や霜で濡れる想定なら、防水透湿素材を使ったモデルが候補になります。

ザ・ノース・フェイスの「GTXバーサタイルレイングローブ」は、3シーズン向けの防水レイングローブです。表地はリサイクルナイロンの「HYVENT」(2層)、内側にGORE-TEXのインサート、手のひらに合成皮革を使っています。

ファイントラックの「エバーブレストレイルグローブ」は、独自の防水透湿素材「エバーブレス®」を採用し、透湿性は10,000g/m²・24hr(A-1法)。水に濡れた状態でも、乾燥時の透湿性を約83%維持するとされています。パームと指先には、濡れても滑りにくいハイグリップ素材を使用。春〜秋の3シーズン用と、保温材入りのウィンターシーズン用の2ラインナップがあります。

どこまでの厚さが要るか

厚さは、薄手のインナー1枚 → 防風・防水の薄手シェル → 保温材入りの積雪期用、の順に増えていきます。

積雪期用の例として、ファイントラックのエバーブレスグローブ(冬季用)も見ておきます。外層にエバーブレス®、中間層に多孔質タイプのグローブインサート、パーム部に国産レザーを使い、3層のバリアでグローブ単体での完全防水を実現したモデルです。アイゼンの着け外しやピッケル操作、ロープワーク、深雪のラッセルやテント設営時での使用を想定しています。

アイゼン歩行中、グローブを着けた手でピッケルを持つ登山者

ピッケルやロープを扱う場面を想定したグローブは、保温性よりも防水性と耐久性を優先した厚い作りになっています。晩秋の一般的な行程とは、想定している操作そのものが違います。

もう少し手軽な選択肢には、ショーワグローブの「防寒テムレス(No.282)」があります。本来は農業や漁業、物流などの作業用で、ポリウレタンの外側に、ボアタイプの裏起毛を組み合わせた防水の防寒手袋です。汗などの湿気を外に逃がす透湿性があり、マイナス60℃の環境でも柔軟性を保つとされています。晩秋の通常の行程には暖かすぎることが多いので、初雪や冷たい雨が予想される日の予備として考えるとよい手袋です。

晩秋の日帰り〜小屋泊の行程で、アイゼンやロープワークを使う場面はまずありません。選ぶ基準は、積雪期かどうか、ではなく、その日の行程でどんな操作が要るかです。

比較表は、メーカーと販売店の記載をもとにしています。

製品 素材 防水 想定
ハンズオングリップ Hobo メリノウール(毛100%) なし 薄手の単体手袋・インナー(1双46g、販売店実測)
スマートウール ライナーグローブ ウール48%+ポリエステル48%ほか なし 薄手のインナー(43g、販売店記載)
ザ・ノース・フェイス イーチップグローブ リサイクルフリース(ポリエステル) なし 冬のインナー〜春・秋の防寒用
スワニー トレイルフレクサーグローブ 甲:ゴアテックス インフィニアム™ ウィンドストッパー®、手のひら:ヤギ革 なし(防風) 3シーズン、冬の樹林帯
ザ・ノース・フェイス GTXバーサタイルレイングローブ 表:リサイクルナイロン HYVENT、インサート:GORE-TEX あり 3シーズンの雨
ファイントラック エバーブレストレイルグローブ エバーブレス®(透湿性10,000g/m²・24hr) あり 3シーズン用と冬用
ショーワグローブ 防寒テムレス No.282 ポリウレタン+ボア裏起毛 あり(透湿) 作業用の防寒手袋。寒い日の予備
ファイントラック エバーブレスグローブ(冬季用) エバーブレス®+多孔質インサート+国産レザー あり(完全防水) 積雪期、アイゼン・ピッケル操作

オススメのポイント

薄手のウールインナーは、晩秋から初冬の大半の行程で足りる軽さと、ほかの手袋と重ねられる柔軟さがあります。風の強い稜線が中心なら防風タイプ、雨や霜で濡れる行程なら防水透湿タイプを足す、という組み合わせが基本です。厚手の積雪期用は、アイゼンやロープワークなど、操作性が要る場面に向けて作られています。

気になる点

比較表はメーカーと販売店の記載をもとにしていて、実際に使ったときの暖かさや操作感までは確認できていません。Hoboとスマートウールの重量は販売店の記載で、メーカー公表値ではありません。各ブランドとも品番や仕様がシーズンで変わることがあるため、購入前にリンク先の記載を確認してください。

まとめ

  • 手袋に求められる性能は保温性・防水透湿性・作業性の3つ
  • 防水モデルと防滴モデルの違いは縫い目の処理
  • 構造は着脱式と一体型の2種類
  • 晩秋はまず薄手のウールインナーを基準に、防風・防水タイプを必要に応じて組み合わせる
  • 厚手の防寒・防水一体型は積雪期・アイゼン歩行向けで、晩秋には過剰になりやすい

服装全体の組み立てはレイヤリングの考え方、気温の見積もりは山の気温は標高で何度下がるか、日帰りの持ち物全体は日帰り登山の持ち物リストにまとめています。

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