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注意:自然環境・気象・野生動物の状況は地域差と個体差が大きく、本記事の内容はあらゆる状況での安全を保証するものではありません。入山前に必ず該当自治体・管理団体の最新情報を確認してください。
買ったときは水を玉のように弾いていたレインウェアや登山靴が、いつの間にか生地に染み込むようになっている。洗っても戻らないことがあります。
この記事でわかること
- 撥水が落ちると、見た目以上に何が起きているか
- 洗濯だけで直るときと、防水スプレーが要るときの見分け方
- フッ素系と非フッ素系で、対応できる素材がどう違うか
- 革用・ファブリック用・レインウェア用で製品を使い分ける理由
- スプレーの使い方と、撥水剤では直らないところ
結論
防水スプレーは「対応素材」で選びます。革にはフッ素系か、革にも対応した非フッ素系。ゴアテックスなどの防水透湿素材には、その素材に対応していると明記された製品を使います。洗濯しても水を弾かなくなったら、補充のタイミングです。
撥水が落ちると何が起きるか
モンベルは、防水透湿性を持つ生地に撥水処理を行うと、水を生地表面である程度弾き落とし、生地表面が水の膜で覆われてしまうのを防ぐため、透湿性の機能を低下させることなく維持できると説明しています。
逆に言うと、撥水が落ちた状態は、表面が水の膜で塞がれた状態です。モンベルは「はっ水性が落ちてウエアの表面が水分で塞がってしまうと、本来の性能を発揮できません」としたうえで、「はっ水性が落ちた状態では生地の保水量が増え、その水が気化する際に熱を奪って体を冷やしてしまいます」とも書いています。透湿性の高さを売りにしたレインウェアでも、撥水が切れていれば宝の持ち腐れになるということです。
レインウェアの選び方で触れた透湿性の数値も、撥水が効いている前提での話です。生地が水を吸ってしまえば、測定方法がA-1法でもB-1法でも関係なくなります。
いつ使うか。撥水が落ちたサイン
買ってすぐの製品は、水をかけると玉になって転がり落ちます。これが生地に染み込むように変わったら、撥水が落ちているサインです。

モンベルは、汚れを落とすことで撥水性が回復するため、まず洗濯することを勧めています。土埃や皮脂、汗の塩分が生地の表面を覆うと、撥水剤が効きにくくなるためです。そのうえで、洗濯しても撥水性の回復が見られない場合は、補充の時期と考えるよう案内しています。
つまり順番は、洗う→それでも弾かない→防水スプレー、の2段階です。弾かなくなった時点でいきなりスプレーを足すと、汚れの上に撥水剤を重ねるだけで終わることがあります。
成分で選ぶ。フッ素系と非フッ素系、対応素材が違う
防水スプレーは大きく「フッ素系」と「フッ素を使わない製品」に分かれます。登山・アウトドア用品の解説記事では、フッ素系は水だけでなく油汚れもはじきやすい一方、シリコン系は水をはじく力を出しやすいものの油汚れには弱く、通気性や風合いに影響することがあると紹介されています。メーカー自身がこの対比を公表しているわけではないため、この部分は一般的な解説としての位置づけです。

実際に対応素材を見ても、成分によって得意分野が分かれています。
- フッ素系:皮革専用の製品が多く、持続期間が長い傾向があります
- フッ素を使わない製品:近年の環境規制を背景に増えてきた種類で、皮革・ファブリック・防水透湿素材まで対応範囲を広げた製品があります
どちらが優れているかではなく、自分の靴やウェアの素材に対応しているかが最初の分かれ目です。革の登山靴にレインウェア用のスプレーをかけても、革に必要な保革・栄養成分は入っていません。逆に、ゴアテックスなどの防水透湿素材に革用のスプレーを使うと、素材が想定していない成分を塗ることになります。
製品で比べる。同じ対応素材でも中身が違う

いずれも公式ページの記載です。
| 製品 | 成分 | フッ素使用 | 対応素材 | 容量 | 価格を見る |
|---|---|---|---|---|---|
| コロニル 1909 シュプリームプロテクトスプレー | フッ化炭素樹脂+シーダーウッドオイル | あり | スムースレザー・スウェード・ヌバック・ヌメ革・メタリック仕上げ・プリント革 | 200ml | 楽天 |
| コロニル カーボンプロ | カーボンテクノロジー(網目状の保護膜) | なし(DIN EN 14582準拠) | スムースレザー・スウェード・ヌバック・テキスタイル・防水透湿素材・合成皮革 | 300ml | 楽天 |
| ニクワックス TX.ダイレクトスプレー | ― | なし(PFC・エアロゾール不使用) | 吸湿性インナー付きの防水透湿ウェア | 300ml | 楽天 |
持続期間はコロニルの2製品に公式の記載があり、1909シュプリームプロテクトスプレーが約2週間、カーボンプロが約4週間です。ニクワックスのTX.ダイレクトスプレーに持続期間の記載はありません。e-passoの商品ページには、表面についた水滴はきれいに落とし、透湿性と通気性は損なわないとあります。
1. コロニル 1909 シュプリームプロテクトスプレー
公式ページによると、フッ化炭素樹脂とシーダーウッドオイルが皮革に浸透し、防水効果と保革・栄養効果を両方与える製品です。対応素材はスムースレザーからメタリック仕上げまで幅広く、革の登山靴全般に使えます。
オススメのポイント
防水と保革を同時に行えるのが革用スプレーならではの利点です。使い方は約20cm離し、30cm四方に4秒を目安に2回スプレー。乾燥後、スムースレザーは乾拭き、起毛皮革はブラッシングするよう案内されています。
気になる点
対応素材は革のみで、ファブリック部分やゴアテックスの膜には使えません。アッパーの一部にメッシュや防水透湿素材を使った靴には、素材ごとに製品を分けて使う必要があります。
2. コロニル カーボンプロ
公式ページは、新技術「カーボンテクノロジー」で耐摩耗性と伸縮性を持つ網目状の保護膜を表面に作り、水や汚れから守るとしています。フッ素を使わず、ドイツの国家規格DIN EN 14582に準拠した試験を経ている点も明記されています。
オススメのポイント
対応素材がもっとも幅広い製品です。スムースレザーからテキスタイル、防水透湿素材、合成皮革まで1本でカバーでき、革とファブリックが混在した登山靴に向きます。持続期間も約4週間と、コロニルの中では長めです。
気になる点
対応範囲が広いぶん、革専用の1909シュプリームプロテクトスプレーのような保革・栄養効果の記載はありません。革の栄養補給を重視するなら、革専用の製品と使い分ける選択肢もあります。
3. ニクワックス TX.ダイレクトスプレー
公式ページは、吸湿性インナー付きの防水透湿ウェアの性能向上と透湿性の回復を目的とした製品と説明しています。PFC(有機フッ素化合物)とエアロゾールの両方を使っていません。
オススメのポイント
国内取扱店のカモシカスポーツによると、裏地に吸湿性生地を使ったウェアでも、表面だけに撥水加工を施せるのが特徴です。肘・膝・肩まわりなど、撥水が落ちやすい部分だけを補修する使い方もできます。レインウェアの選び方で紹介したゴアテックス系のジャケットは、この対応範囲にあたります。
気になる点
対応は防水透湿ウェアが中心で、革の登山靴には使えません。登山靴とレインウェアを両方手入れするなら、革用の製品と分けて持つことになります。
使い方
スプレータイプの基本は、モンベルの案内に沿うと次のとおりです。
- 生地の表面をきれいにし、乾燥している状態でスプレーする
- 使用前に缶を10回ほどよく振り、できるだけ垂直に保って約15cmの距離からムラなくスプレーする
- 乾燥させながら何層にも薄く重ねるのがコツ
一方、つけ込みタイプは順番が逆で、洗濯後の濡れた状態のウェアに散布するか、撥水剤につけ込んでから乾燥機で乾かします。スプレータイプと混同すると、乾いた靴にかけるべき製品を濡らしてしまったり、逆のことが起こります。製品ごとの使用方法を確認してから使ってください。
もう一つ、見落としやすいのが安全面です。モンベルは、溶剤は引火性があり、スプレー噴霧は吸い込むと危険で、目や肌を刺激することがあるとして、使用は必ず風通しの良い屋外で行うよう案内しています。玄関先やベランダなど、換気のある場所で作業してください。
防水スプレーで直らないところ

撥水剤が直せるのは、あくまで生地表面の撥水性です。防水透湿素材の膜そのものが傷んで防水性が落ちた場合は、スプレーをかけても戻りません。登山靴の手入れでも触れているとおり、これは撥水剤の対応範囲の外にある劣化です。生地の破れや縫い目のほつれも同様で、撥水スプレーでは塞がりません。
まとめ
- 撥水が落ちると、生地表面が水の膜で塞がれ、透湿性能も働かなくなる
- 見分け方は水が玉にならず染み込むかどうか。まず洗濯、それでも戻らなければ補充のタイミング
- フッ素系は皮革向き、持続期間が長い製品が多い
- フッ素を使わない製品は対応範囲が広く、防水透湿素材まで使えるものがある
- 製品ごとに対応素材が違う。革用とレインウェア用は分けて持つ
- スプレーは乾いた状態、つけ込みは濡れた状態からと手順が逆。風通しの良い屋外で使う
- 膜そのものの劣化や生地の破れは、撥水剤では戻らない
靴のカットや防水メンブレンの選び方は登山靴のカットに、靴そのものの手入れは登山靴の手入れにまとめました。
出典
- モンベル カスタマーサービス
- モンベル
- コロニル(Collonil)公式サイト
- コロニル(Collonil)公式サイト
- Nikwax(ニクワックス)公式サイト
- カモシカスポーツ(NIKWAX日本国内取扱店)
- e-passo(NIKWAX取扱店)
画像クレジット
- 霧のかかった山を雨具姿で眺める登山者(アイキャッチ): Adobe Stock #828386511
- 撥水加工された生地の上で玉になる水滴: Adobe Stock #437649927
- 山頂の岩場を歩く革の登山靴: Adobe Stock #334685430
- 倒木の上を歩く登山靴: Adobe Stock #266969883
- 沢の水しぶきの中を歩く登山靴: Adobe Stock #218953880


