山でのマダニ対策。服装と忌避剤、咬まれたときにやってはいけないこと

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注意:自然環境・気象・野生動物の状況は地域差と個体差が大きく、本記事の内容はあらゆる状況での安全を保証するものではありません。入山前に必ず該当自治体・管理団体の最新情報を確認してください。

登山の装備を考えるとき、マダニは後回しにされがちです。クマやスズメバチと違って、その場では何も起きないからです。困るのは数日から数週間あとで、しかも自分では原因に気づきにくい。

医学的な判断が必要な場面については書かず、入山前に準備できることと、咬まれていたときにやってはいけないことに絞ります。

この記事でわかること

  • マダニがどこにいて、いつ活動するか
  • 肌を出さない服装の具体的なやり方
  • 下山後にやること
  • 咬まれているのを見つけたとき、絶対にやってはいけないこと

マダニはどこにいるか

「深い山に入らなければ大丈夫」は当てはまりません。国立感染症研究所のマダニ対策、今できることが挙げている生息場所は、民家の裏山や裏庭、畑、あぜ道です。低山どころか、家の裏にいます。

多いのは、シカやイノシシ、野ウサギといった野生動物が出没する環境。つまりシカが出る山域は、そのままマダニの多い山域です。登山道の脇の下草、笹薮、休憩で腰を下ろした草地。どれも該当します。

真夏の草原を抜ける登山道

咬まれると何が起きるか

マダニが媒介する感染症のひとつが SFTS(重症熱性血小板減少症候群)です。厚生労働省のSFTSに関するQ&Aによると、潜伏期間は6日から2週間程度

出るのは発熱と消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)で、時に頭痛、筋肉痛、神経症状も伴います。咬まれた翌日ではなく、1週間以上あとに来ます。 山に行ったことと結びつけにくいのが厄介なところです。

そして、地域の記載が更新されています。患者はこれまで西日本を中心に報告されていましたが、2025年に関東や北海道でも感染した症例が報告されました。西日本だけの問題ではなくなっています。

危険が高まるのは、マダニの活動が盛んな春から秋です。

服装が対策の中心になる

装備を買い足すより先に、着方で防ぐのが基本です。厚生労働省が挙げているのは、長袖・長ズボン、裾を中に入れること、足を完全に覆う靴、帽子、手袋、首にタオル。要するに肌を出さないということです。

そしてもう一つ、明るい色の服が勧められています。マダニを目視で見つけやすいからです。黒いパンツに付いた3mmの虫は、まず見つかりません。

登山に置き換えると、実際にやることは次のとおりです。

  • シャツの裾はパンツの中に入れる。 出しているとそこから入られます
  • パンツの裾は靴下の中に入れるか、ゲイターで塞ぐ
  • 袖口は手袋の中に入れる
  • 首はタオルかハイネックで覆う
  • 明るい色を選ぶ。 黒いパンツの上のマダニは見つけられません

半ズボンとサンダルは、資料でもはっきり「不適当」とされています。夏の低山ほど軽装になりがちですが、マダニの観点では逆です。

夏の低山の杉林を抜ける登山道

忌避剤は2種類

2013年からマダニ向けの忌避剤が認可され、現在はディートイカリジンの2種類が市販されています。資料には持続時間と注意点が表でまとめられています。

成分 含有率 分類 持続時間 使用の制限
ディート 5〜10% 防除用医薬部外品 1〜2時間 6ヶ月未満の乳児には使用しない
ディート 12% 防除用医薬品 約3時間 同上
ディート 30%(高濃度) 防除用医薬品 約6時間 12歳未満は使用しない
イカリジン 5% 防除用医薬部外品 〜6時間 年齢の制限なし
イカリジン 15%(高濃度) 防除用医薬品 6〜8時間 年齢の制限なし

ディートには「独特の匂い」「べたつき感」に加えて、プラスチック・化学繊維・皮革を腐食することもあるという注意が付いています。登山では時計、ストックのグリップ、レインウェアなど、触れて困るものが身の回りに多い。この点はイカリジンのほうが扱いやすいと言えます。

行動時間で選ぶなら、日帰りでも持続時間が3時間以下のものは塗り直しが前提になります。

下山後にやること

資料が挙げているのは次の3つです。

  • 上着や作業着を家の中に持ち込まない
  • シャワーや入浴のときに、ダニが付いていないかチェックする
  • ガムテープを使って服に付いたダニを取り除く

ガムテープは登山でも現実的です。ザックに1つ入れておけば、下山後に車の外で服を軽く叩いてから貼り付けられます。チェックする場所は、脇の下、膝の裏、股、腰回り、首、髪の生え際といった、柔らかくて見えにくいところです。

咬まれているのを見つけたら

自分で引き抜かないでください。 これが、この記事でいちばん伝えたいことです。

無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残って化膿したり、マダニの体液を逆流させて病原体が体内に入りやすくしてしまう恐れがあるので、医療機関(皮膚科など)で処置をしてもらってください。

シュルツェマダニの拡大写真

マダニは長時間、ときに10日間以上吸血します。慌てて取る必要はありません。皮膚科で処置を受けてください。

そして、取れたあとも終わりではありません。咬まれたら数週間は体調の変化に注意し、発熱などがあれば受診するように、とされています。潜伏期間が長いぶん、忘れた頃に来ます。

受診するときは、いつ・どこの山に入ったかを伝えてください。判断の材料になります。

逆に、あまり当てにならないもの

  • 虫よけスプレーだけの対策 — 上記のとおり、付着を完全には防ぎません
  • 「山に入らなければ平気」という考え — 資料は民家の裏庭や畑も挙げています
  • 黒っぽいウェア — 機能は変わりませんが、付いたマダニを目視できません

まとめ

  • マダニはシカやイノシシが出る環境に多い。低山や里山も対象
  • SFTSの潜伏期間は6日〜2週間。2025年に関東と北海道でも症例が報告された
  • 対策の中心は服装。裾を入れる、明るい色を選ぶ
  • 忌避剤はディートとイカリジンの2種類。持続時間で選ぶ。ディートは樹脂や化学繊維を傷めることがある
  • 忌避剤は付着を完全には防がない。服装と組み合わせる
  • 咬まれていても自分で引き抜かない。皮膚科へ。その後も数週間は体調に注意する

同じ成分で相手にできるヤマビルについては丹沢のヤマビル対策にまとめました。ほかに熊鈴の選び方熊スプレーの運搬ルールも用意しています。

出典

画像クレジット

Wikimedia Commons と Flickr から。

  • 真夏の草原を抜ける登山道: Kirigamine by azumaya888(CC BY 2.0)
  • 夏の低山の杉林を抜ける登山道: Trail from Mount Kobotoke-Shiroyama to Kobotoke Pass by \_\(CC BY 2.0)
  • シュルツェマダニ: Ixodes persulcatus by Lamiot(CC BY-SA 3.0)
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