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注意:自然環境・気象・野生動物の状況は地域差と個体差が大きく、本記事の内容はあらゆる状況での安全を保証するものではありません。入山前に必ず該当自治体・管理団体の最新情報を確認してください。
レインウェア選びで最初に目に入るのが「耐水圧20,000mm」という数字です。ところが実際に山で困るのは、雨が染みてくることより、内側が汗で濡れることのほうが多い。
選ぶ基準は3つ
1. 耐水圧はほぼ横並び。差がつくのは透湿性
耐水圧はメーカーや素材によって異なります。モンベルは公式に「レインウエアに求められる耐水圧20,000mm以上をクリアした素材のみを使用」と書いています。ファイントラックのエバーブレスも20,000mmです。
つまり耐水圧だけで製品全体の使いやすさは判断できません。差が出るのは透湿性、つまり内側の水蒸気を外に逃がす性能のほうです。
2. 透湿性の数値は、測定方法を見ないと比較できない
ここが最も見落とされている点です。透湿性の数値には測定方法が併記されています。これが違うと、数値をそのまま比べても意味がありません。
- モンベル ストームクルーザー: 35,000g/m²・24hrs(JIS L-1099 B-1法・参考値)
- ファイントラック エバーブレスフォトン: 10,000g/㎡・24hr(JIS L 1099 A-1法)
同じ「JIS L 1099」でも A-1法 と B-1法 は別の試験です。一般に B-1法のほうが大きな数値が出ます。 したがって「35,000 対 10,000 だから3.5倍」という読み方は成立しません。
モンベル自身も自社の数値に「参考値」と付けています。数値は目安であって、絶対的な性能証明ではないという姿勢です。
メーカーをまたいで比べるときは、測定方法が同じかどうかを先に確認してください。 違うなら、数値の大小ではなく素材の種類と設計で判断するしかありません。
3. 軽さと生地の厚さは引き換え
デニール(D)は糸の太さの単位です。生地の丈夫さは糸の素材や織り方にも左右されるため、数値だけでは決まりません。
- ストームクルーザー: 表地20デニール、平均重量254g(Men’s)
- レインダンサー: 表地50デニール、平均重量300g(Women’s)
同じゴアテックス3レイヤーでも、表地の厚さが違えば重さも耐久性も変わります。藪漕ぎや岩場の多い山域で薄い生地を選ぶと、擦れに弱いという代償があります。
比較表
いずれも公式ページの記載です。重量は性別とサイズで変わるため、どのモデルの値かを明記しています。
| 製品 | 素材 | 耐水圧 | 透湿性 | 平均重量 |
|---|---|---|---|---|
| モンベル ストームクルーザー ジャケット(Men’s) | ゴアテックス ファブリクス3レイヤー(表20デニール) | 20,000mm以上 | 35,000g/m²・24hrs(JIS L-1099 B-1法・参考値) | 254g |
| モンベル レインダンサー ジャケット(Women’s) | ゴアテックス ファブリクス3レイヤー(表50デニール) | 20,000mm以上 | 25,000g/m²・24hrs(JIS L-1099 B-1法・参考値) | 300g |
| ファイントラック エバーブレスフォトン ジャケット(Men’s M) | 表15デニールナイロン/エバーブレスメンブレン/裏20デニールポリエステルニット | 20,000mm(JIS L 1092 B法) | 10,000g/㎡・24hr(JIS L 1099 A-1法) | 300g |
重量を比べるときは、同じ性別・同じサイズで揃えてください。 メンズとレディースでは数十グラム違うのが普通で、表を眺めているだけだと簡単に取り違えます。
1. モンベル ストームクルーザー
公式ページによると、ゴアテックス ファブリクス3レイヤーで、表地は20デニール・バリスティックナイロン・リップストップ。透湿性は35,000g/m²・24hrs(JIS L-1099 B-1法・参考値)、平均重量254g。
オススメのポイント
同社のフラッグシップという位置づけで、3レイヤーのゴアテックスとしては軽い部類です。表地が薄いぶん、たたんだときも小さくなります。長時間行動する縦走で、常にザックに入れておく前提なら重量の差が出ます。
気になる点
表地20デニールは、擦れに対しては薄いほうです。岩場で体をこすりつける登り方をする人や、笹薮を漕ぐ機会が多い人は、この薄さが弱点になり得ます。軽さを取ると耐久性を差し出すという、素材の基本的な関係から逃れられません。
2. モンベル レインダンサー
公式ページによると、同じくゴアテックス ファブリクス3レイヤーですが、表地は50デニール・ナイロン・リップストップ。透湿性は25,000g/m²・24hrs(同じB-1法)、平均重量300g(Women’s)。
オススメのポイント
表地が50デニールと厚く、擦れに強い構成です。透湿性の数値はストームクルーザーより低いものの、同じ測定方法での比較なので、数値をそのまま比べられます。日帰り中心で、重量より扱いの気楽さを取りたい場合に合います。
気になる点
そのぶん重くなります。ストームクルーザーとは表地の厚さと透湿性の両方で差があり、軽量性を優先するなら選択肢から外れます。
3. ファイントラック エバーブレスフォトン
公式ページによると、耐水圧20,000mm(JIS L 1092 B法)、透湿性10,000g/㎡・24hr(JIS L 1099 A-1法)。ジャケットはMen’s Mで300g、表地15デニールナイロン・リップストップ、裏地20デニールポリエステルニットの3層構成です。
オススメのポイント
ゴアテックスではなく自社開発のメンブレンを使っています。公式は生地のストレッチ性を挙げており、動きやすさを設計の軸に置いた製品です。止水ファスナーのフラップを廃した構造など、着脱時のストレスに手が入っています。
気になる点
透湿性の数値だけを見て他社と比べると、実態を見誤ります。 測定方法がA-1法で、B-1法の数値とは土俵が違うためです。カタログ値で優劣を判断したい人には、かえって選びにくい製品かもしれません。

用途別の選び方
- 日帰りの低山中心 … 重量よりも扱いやすさ。表地の厚いモデルで十分です
- 夏の縦走・長時間行動 … 軽さとたたんだ大きさで選びます。薄手の3レイヤー
- 藪漕ぎ・沢沿い・岩場が多い … 表地の厚いモデル。薄手は擦り切れが心配です
- 動きの多い行動 … ストレッチ性を掲げている製品が候補になります
レインウェアは防風にも使えます。晴天時の通気性や携行性を重視して、別にウインドシェルを選ぶ方法もあります。晴れた稜線で使う薄手の1枚についてはウインドシェルは何のために持つのかに、下に着るものとの組み合わせはレイヤリングの考え方にまとめました。
よくある質問
耐水圧は高いほどいいですか
耐水圧だけでなく、透湿性、縫い目や開口部の防水処理、サイズや換気のしやすさも確認してください。
ゴアテックスでなくても大丈夫ですか
ファイントラックのように自社メンブレンで作られている製品もあります。素材名ではなく、公式が出している数値と測定方法、生地の厚さで判断するほうが実質的です。
上下セットで買うべきですか
雨の中で行動するならパンツも必要です。ジャケットだけでは下半身から濡れて体温を奪われます。
安いレインウェアとの違いは何ですか
主に透湿性と、細部の作り(止水ファスナー、フードの調整、ベンチレーション)です。防水するだけなら安いものでもできますが、汗を逃がす性能で差が出ます。
まとめ
- 耐水圧に加えて、透湿性・縫い目や開口部・サイズと換気を見る
- 透湿性の数値は測定方法(A-1法/B-1法)が違うと比較できない。メーカーをまたぐときは特に注意
- 生地の厚さ(デニール)と軽さは引き換え。山域と使い方で選ぶ
- 撥水は落ちる。洗濯と撥水処理は前提
- 透湿は汗の量に追いつかない。着るタイミングと行動速度のほうが濡れ方を決める
装備の数値をどう読むかという意味では、熊鈴の選び方も同じ構造です。あちらは音量の数値が公表されていないという話でした。持ち物のルールについては熊スプレーの運搬ルールにまとめています。