熊鈴の選び方とおすすめ3モデル。消音方式・素材・重量の比較

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注意:自然環境・気象・野生動物の状況は地域差と個体差が大きく、本記事の内容はあらゆる状況での安全を保証するものではありません。入山前に必ず該当自治体・管理団体の最新情報を確認してください。

熊鈴は種類が多いわりに、選ぶ手がかりが少ない装備です。音量の数値が公表されている製品はほとんどなく、店頭で振ってみても、実際に山で背負って歩いたときの鳴り方とは違います。

そこで本記事では、メーカーが公開している仕様(素材・重量・消音方式)だけを使って比較しました。数値の出どころは全て公式ページと公式リーフレットです。使用感の評価は、実際に使い込んだうえで別途レビュー記事として扱います。ここでは「買う前に決められること」に絞ります。

選ぶ基準は3つ

1. 消音できるか、そして片手でできるか

見落とされがちですが、ここがいちばん差になります。熊鈴は鳴らし続けるのが目的の道具ですが、鳴らしたくない場面が確実に出てきます。登山口までの電車やバス、早朝の山小屋、休憩中のテント場。ここで消せないと、ザックの奥にしまうか外すことになり、次に歩き出すとき付け直すのを忘れます。

さらに言えば、消音操作は片手でできるかまで見たほうがいいです。行動中はもう片方の手にストックを持っています。

2. 素材(真鍮かスチールか)

音色を左右します。真鍮は高めで余韻が長く、スチールは硬めの音になります。どちらが良いという話ではなく、余韻が長いほうが断続的に鳴り続けるので、歩行のリズムが乱れても音が途切れにくいという違いがあります。

3. 重量と取り付け方式

40〜65gの範囲に収まる製品が多く、この差が歩きに影響することはまずありません。むしろ違いが出るのは取り付け方式です。ザックのショルダーハーネスに付けるのか、ベルトループに付けるのかで、鳴り方が変わります。

比較表

草地で採食するツキノワグマ

製品 本体素材 重量 消音方式 サイズ
モンベル トレッキングベル サイレント 真鍮(カラビナはアルミニウム合金) 43g 本体を時計回りに回して振り子を引き上げる ベルΦ32×34mm
モンベル トレッキングベル スクエア サイレント スチール(カラビナはアルミニウム合金) 44g テープに内蔵したマグネットで留める ベル50×35×厚み30mm
東京ベル 森の鈴 TB-K1 真鍮(機構部はナイロン、カラビナはアルミニウム) 63g(カラビナ含む) 片手で引くワンタッチ操作 音響体Φ35mm/全長83mm

1. モンベル トレッキングベル サイレント

公式ページで公開されている仕様は、本体が真鍮、カラビナがアルミニウム合金、重量43g、ベルの寸法がΦ32×34mmです。消音は、ベル本体を時計回りに回して振り子を引き上げる方式。

オススメのポイント

3つの中でいちばん軽く、いちばん小さい。真鍮なので余韻も出ます。シンプルな構造で、消音のための可動部が本体そのものなので、テープや磁石のように後から劣化する部品がありません。

気になる点

回して消音する方式は、両手が必要になりやすいです。ザックに付けたまま片手で回そうとすると、ベルが逃げて回しにくい。歩きながらの操作には向きません。

2. モンベル トレッキングベル スクエア サイレント

公式ページによると、本体はスチール、カラビナはアルミニウム合金、重量44g。ベルは横50×縦35×厚み30mmの角形で、テープに内蔵したマグネットで消音します。カラビナが回転しない設計になっており、バックパックやベルトループにワンタッチで取り付けられます。

オススメのポイント

マグネット式なので、消音操作がいちばん速いです。テープをベルに当てるだけ。カラビナが回転しない設計は、歩行中にベルが横を向いて鳴りが悪くなるのを防ぎます。カラーが5色あるので、家族で持つときに区別しやすいのも実用的です。

気になる点

公式ページに強力な磁石を使用しているため、ペースメーカーなどの電子医療機器に近づけないよう注意の記載があります。該当する方が身近にいる場合は、この製品を避けるか、取り付け位置を検討してください。

角形かつスチールなので、音色は真鍮の丸型とは異なります。余韻の長さを重視するなら1番か3番のほうが好みに合うはずです。

3. 東京ベル 森の鈴 TB-K1

公式リーフレットによると、音響体と振り玉が真鍮、機構部がナイロン、丸カン線材がステンレス、カラビナがアルミニウム。音響体の直径はΦ35mm、全長83mm(カラビナ含まず)、重量63g(カラビナ含む)。日本製で、国内特許(特許第5569691号)を取得しています。

公式は「世界初の片手で引くワンタッチ操作だけで、消音・発音の切り替えが可能」「高音で澄んだ余韻の長い音色」と説明しています。

オススメのポイント

片手操作で消音できる点が、この3つの中では明確な差です。ストックを持ったまま、鳴らしたくない区間だけ消せます。真鍮の音響体で余韻も長い。

気になる点

63gと、今回の3つでは最も重い。とはいえ絶対値としては軽量で、これが理由で選択肢から外れることはないでしょう。機構部にナイロンを使っているので、可動部の消耗はほかの2つより意識しておいたほうがいいです。

用途別の選び方

ツキノワグマ。胸の白い月の輪模様がはっきり見える

  • 日帰りの低山 … 消音の頻度が低いので、軽量なモンベル トレッキングベル サイレントで足ります
  • 北海道・東北の縦走 … 行動時間が長く、テント場や小屋での消音が増えます。片手で切り替えられる森の鈴か、マグネット式のスクエアが向きます
  • 公共交通機関で登山口まで行く … 乗車前の消音を確実にするなら、操作が速いマグネット式
  • 家庭菜園・通勤路 … 付け外しの頻度が高いので、カラビナがワンタッチのタイプ

熊鈴でどこまで防げるのか

残雪の斜面を歩くツキノワグマ

ここが本題です。環境省が公開しているクマ類の出没対応マニュアル(改定版・令和3年3月)には、すべての入山者に共通する注意点が挙げられています。

鈴やラジオなど音が鳴るものを携帯しましょう。※人の存在・接近をクマに知らせ、突発的な遭遇を避けるための装備ですが、過信はせず、常に周囲に気を配ることを忘れてはいけません。

そのうえで、同じマニュアルは熊鈴が効かない具体的な状況を挙げています。

山菜やキノコ採り中などで座っている状態や立ち止まっている状態では、鈴は鳴らないので注意が必要です。また、渓流釣り中は沢の音で鈴やラジオの音がかき消されてしまうので注意が必要です。

つまり熊鈴は、歩いていて、まわりが静かなときにだけ機能する装備です。山菜採りやきのこ狩りでしゃがみ込んだ瞬間、沢沿いに入った瞬間に、音は出なくなるか届かなくなります。同マニュアルは「悪天候や夕暮れ時は人とクマがお互いの存在に気付きにくくなる」ことにも触れています。

音が届かない場面があることを踏まえると、熊鈴の位置づけははっきりします。遭遇の確率を下げるための装備であって、遭遇そのものをなくす装備ではありません。立ち止まる作業をするなら手を叩くか声を出す、沢沿いでは別の手段を考える、という補いが要ります。

装備を増やしたことで行動が大胆になるのが、いちばん危ない方向です。

よくある質問

熊出没注意の標識(北海道)

音量はどれくらいですか

今回調べた範囲では、3製品とも公式に音量の数値(デシベル)は公表されていませんでした。カタログ値で比較することはできません。

2つ以上つけると効果は上がりますか

音の総量は増えますが、立ち止まると鳴らず、沢音でかき消されることは変わりません。数を増やすより、鳴らない場面を自分で把握しておくほうが実質的です。

ラジオとどちらがいいですか

環境省のマニュアルは鈴とラジオを並列で挙げています。ラジオは立ち止まっていても鳴り続けるので、山菜採りなど静止する作業では鈴より理にかなっています。ただし他の登山者への影響があるので、場所は選んでください。

買ったらすぐ使えますか

消音操作は、家で何度か練習しておいてください。登山口で初めて触ると、鳴らしたくない場面で手間取ります。

まとめ

岩の上に立つツキノワグマ

  • 選ぶ基準は「消音できるか」「素材(音色)」「重量と取り付け方式」の3つ。中でも消音のしやすさで決まる
  • 最軽量なのはモンベル トレッキングベル サイレント(43g・真鍮・回して消音)
  • 操作が最も速いのはスクエア サイレント(44g・スチール・マグネット式)。ただし強力な磁石を使う点に注意
  • 片手で切り替えたいなら東京ベル 森の鈴(63g・真鍮・特許取得の片手操作)
  • 熊鈴は歩行中かつ静かな環境でだけ機能する。環境省も「過信はせず」と明記している

入る前に、その山域で最近の目撃があるかを見ておくと、鳴らし方も変わります。道県ごとの公開ページはクマの出没情報はどこで見るかに、季節ごとの行動はツキノワグマはいつ動くのかにまとめました。

鈴で遭遇の確率を下げたうえで、それでも出会ってしまった場合に備えるのが熊スプレーです。併せて持つ場合は、遠征先への運び方に制約があります。飛行機には持ち込めないので、熊スプレーの運搬ルールを先に確認しておいてください。

鈴を忘れたときのために

熊の出没を知らせる道路の電光掲示板

どれだけ良い鈴を選んでも、家に置いてきたら意味がありません。忘れた経験のある人は少なくないはずです。

そこで使えるのが、スマートフォンを熊鈴として鳴らせるアプリ BearBell です。OnTrailsが制作している熊鈴アプリです。

  • ポケットに入れたままバックグラウンドで鳴り続ける
  • Autoモードで、GPSが移動を検知したときだけ鳴らす
  • 鈴音は3種類。再生速度と音量を調整できる
  • クマの目撃情報と熊鈴の利用記録を地図上で確認できる
  • 警告音(2種類・ループ再生)と、10回再生ごとの音声アナウンス
  • 好きな音を録音・インポートしてベル音にできる
  • SOS機能で、緊急時に現在地を含むメッセージを送れる
  • 基本機能は無料。プレミアムでデザイン切り替え・ナイトモード・広告非表示

位置づけとしては「鈴を忘れたときの保険」です。縦走に持っていくならモバイルバッテリーとセットで考えてください。

BearBell アプリのアイコン

OnTrails のアプリ

BearBell

スマートフォンを熊鈴として鳴らすアプリ。バックグラウンド再生、GPSで移動を検知して自動で鳴らす Autoモード、警告音、SOS機能。クマの目撃情報と熊鈴の利用記録を地図上で確認できます。基本機能は無料です。

アプリの詳しい説明を見る

なお、この記事で挙げた環境省の指摘(立ち止まると鈴は鳴らない)は、アプリにも同じように当てはまります。Autoモードは移動を検知して鳴らす仕組みなので、座り込んで作業しているときは鳴りません。その場面では警告音のループ再生のほうが実用的です。

出典

画像クレジット

すべて Wikimedia Commons から。撮影はいずれも日本国内です。

  • ブナ林の登山道: Fagus crenata in Mount Sanpokuzure by Alpsdake(CC BY-SA 3.0)
  • 残雪の斜面のツキノワグマ: Ursus thibetanus in Mount Kurai by Alpsdake(CC BY-SA 3.0)
  • 月の輪が見えるツキノワグマ: Ursus t. japonicus Ueno Zoo by Pelican(CC BY 2.0・動物園で撮影)
  • 採食するツキノワグマ: Ursus thibetanus japonicus eating plants by Alpsdake(CC BY-SA 3.0)
  • 熊出没注意の標識: Warning sign for bear appearance, Kiyokawa, Kamikawa by Robert Thomson(CC BY-SA 2.0)
  • 岩の上のツキノワグマ: Japanese black bear by Kabacchi(CC BY 2.0)
  • 道路の電光掲示板: 熊出没! 要注意 by Takeshi Suzuki(CC BY 2.0)
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